北斗の拳の後半に登場する「修羅の国」。
そこは、かつてラオウやトキが過ごした地であり、彼らの実の兄である北斗琉拳の使い手「カイオウ」がいる国です。
カイオウは、北斗の拳において、主人公ケンシロウに立ちはだかる最後の敵として有名です。
その強さは、ラオウやトキ、ファルコなどを上回るほどの強さであるとされていますが、ケンシロウには最終決戦で敗れてしまいます。
それほどの強さを持っていたカイオウは、なぜケンシロウに敗れたのでしょうか。
ここでは、カイオウがケンシロウに敗れた5つの理由をご紹介していきます。
Contents
1.カイオウがケンシロウに敗れた5つの理由とは?
カイオウは、北斗琉拳の使い手であり、魔闘気と呼ばれる悪のオーラを身にまとうことで、あらゆる物理的な攻撃を無にしてしまう他、その魔闘気を拳に込めて相手にぶつけることで、より強いダメージを相手に与えることが出来ます。
実際、作中でカイオウに物理的なダメージを与えることが出来たのは、主人公ケンシロウだけだったのです。
それほど強いカイオウは、なぜケンシロウに敗れてしまったのでしょうか?
①過去に秘められた恨み…北斗神拳への恨みが強すぎた
そもそもカイオウがなぜ修羅の国にいて、修羅の国の支配者になっているのでしょうか。
その理由には、北斗神拳の継承者争いが大きく影響しています。
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カイオウの血筋は、北斗宗家と呼ばれる「北斗」と名のつく拳法の総本家ともいえる存在で、それぞれの分家に対して影響力を持っている家でもありました。
もちろん、北斗神拳もその一派であり、先の継承者リュウケンは、次の継承者を決めるにあたって、宗家の血を引くラオウとトキを養子として迎え入れ、宗家の意向に配慮したわけです。
問題はその時に、カイオウが選ばれなかったということです。
カイオウにしてみれば、北斗の中でも特に名高い北斗神拳の、その継承者の候補にすら選ばれなかったことは、大きなショックでした。
リュウケンはもちろん考えがあって、悪の心を持ち、野心家であったカイオウを北斗神拳の継承者の候補に加えることは、後の世の争いを招くと判断したのです。
そのショックはいつしか北斗神拳への恨みに変わり、修羅の国でカイオウは力を蓄え、最終的に北斗神拳の血を根絶やしにすることを考えたのです。
カイオウが実際に世界征服のため、そして北斗神拳を滅ぼすための行動に移ろうとした時、ラオウはケンシロウとの戦いで敗れ、トキもラオウとの前哨戦で命を落としていました。
この結果、カイオウはケンシロウを殺すことで、北斗神拳の血を根絶やすことを決意したわけです。
逆を言えば、カイオウが憎しみに身を震わせている間、カイオウ以上にケンシロウが成長したために、最終的にカイオウは命を落としてしまいます。
己の力を過信して、成長することが出来なかったためでしょう。
②修羅の国から出ることなく…井の中の蛙になってしまった
カイオウは、北斗神拳の継承者の候補にもなれなかったため、そのまま修羅の国に残ることになります。
修羅の国には、北斗琉拳の伝承者であるジュウケイがいましたが、ジュウケイは先人の禁を破り、カイオウ、その弟のヒョウ、ハンに北斗琉拳を授けたのです。
そもそも北斗琉拳は、その恐ろしさゆえに魔界への入り口が開いてしまうほどの暗黒拳であり、ジュウケイはその恐ろしさゆえに、自分の代で北斗琉拳を絶やしてしまおうと考えていたぐらいです。
カイオウは北斗琉拳を授けられると、その魔闘気を駆使してあらゆる敵を抹殺し、その大地に修羅の国を建国することになります。
修羅の国は「力あるものが正義」の世界であり、弱い者が強い者に殺されても文句を言えない世界となってしまいます。
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結局カイオウは自分が一番強い世界に居続けたことで、井の中の蛙になってしまったのです。
カイオウを止めるべきヒョウやハンも、カイオウの強さは認めていたようで、カイオウの暴走を止めるためにはラオウやケンシロウなど、北斗神拳宗家の力を借りなくては立ち向かえないと、作中でも嘆いているシーンがあります。
一方でケンシロウはラオウやトキ、レイ、サウザーなどさまざまな強敵と対戦し、そのたびに成長していくのですから、やはり戦いに置いて「経験値」というのは重要であることが分かります。
③世界を手中に収めようとしたカイオウ…しかし支配のためのビジョンを持っていなかった
カイオウは北斗琉拳を身につけて、最終目標として世界征服をもくろみます。
その第一弾として、修羅の国を建国するのですが、そのころ別の大陸ではラオウが覇王軍を起こし、覇王軍がケンシロウにより滅ぼされると天帝軍が現れるなど、さまざまな支配者が群雄割拠している状態でした。
カイオウはこのありさまをじっと指をくわえて見ていたわけではありません。
ですが、カイオウ自身が大陸を渡って戦いに加わり、世界を支配下に置こうとはしませんでした。
むしろ、ラオウでもいい、別の者でもいいので、修羅の国に足を踏み入れた時に対峙して始末すればいいと考えていたのです。
カイオウは世界征服を望んでいましたが、それ以上に北斗神拳にかかわる者たちすべてを殺し、世の中から北斗神拳を抹殺してしまうことを望んでいました。
つまり、世界征服をすると言ってもそのビジョンはなく、自分のホームグラウンドである修羅の国に出向いてきた北斗神拳の使い手たちを殺す、それがカイオウの真の目的だったのです。
そのために、カイオウは手の者を使って「修羅の国の救世主伝説」の噂を広めて、北斗神拳の使い手たちが修羅の国にやって来るように仕向けていたぐらいです。
結局はケンシロウが修羅の国にやってくるわけですが、この時カイオウは「ラオウではないのか」と作中で驚いています。
ケンシロウの強さを把握していないほど、ビジョンを持ちえていなかったことが、このセリフからもわかります。
④リンに子どもを産ませようとしたが…血統にこだわりすぎた
カイオウは血統に強烈なこだわりを持っていました。
なぜなら、自分が北斗神拳の血統に選ばれなかったという、過去の心の傷を負ったままだったからです。
カイオウにとって、選ばれなかったということは「捨てられた」事でもあり、自身のアイデンティティを否定されることでもあったのです。
そのためカイオウは、血統に対して強いこだわりを持ち、天帝の双子の妹であるリンの存在を知ったとたん、リンを捕らえようと躍起になります。
実際にリンを捕らえると、カイオウは何も躊躇することなく「自分の子どもを産め」とリンに迫ります。
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カイオウにとっては、リンと言う血統のいい女性と自分の間に生まれた子どもは「血統のいい子ども」であり、北斗琉拳が世界を支配する口実としてもふさわしいと考えたわけです。
当然リンはカイオウの命令を拒み、あわや殺されてしまいそうになりますが、ケンシロウが駆けつけて事なきを得ます。
リンがケンシロウを慕っているのを見たカイオウは、ますますケンシロウに嫉妬の炎を燃やします。
ここまで来ると、既に戦士としてのプライドが崩壊してしまっているような気がするのは、私だけでしょうか。
⑤憎しみだけで生きてきたカイオウ…愛の力にかなわなかった
カイオウは、言うまでもなく北斗琉拳伝承者にして、修羅の国の王です。
ですが、その地位にたどりつくまでには、北斗神拳の使い手をはじめとする、さまざまな者への恨みや憎しみを力に変える必要がありました。
またカイオウは幼少期に母を失っていますが、その母が亡くなった理由は、北斗宗家の人間を守って死んだことであったことから、ますます北斗宗家の人間への恨みを募らせます。
その結果、カイオウは最初の対戦でケンシロウと戦い、ケンシロウに完勝します。
ついに念願の北斗宗家壊滅を果たせると、捕らえたケンシロウを処刑しようとしますが、シャチや赤鯱等の妨害を受け、処刑は失敗に終わります。
その後もケンシロウを殺そうとあらゆる手を尽くしますが、最後には「悪の力が愛の力を凌駕する」ことを見せつけたうえでケンシロウを殺そうとし、ケンシロウに北斗宗家の秘拳を身につけさせる機会を与えてしまいます。
この余裕こそがカイオウの弱点であり、北斗宗家の秘拳を身につけたケンシロウはカイオウの強さを凌駕し、ケンシロウをして「カイオウはかわいそうな男だ」と言わしめるまでに至ります。
このセリフこそ、ケンシロウがカイオウのことを案じた「愛」であり、その愛に触れたことで、カイオウ自らも北斗宗家の血を引くリュウオウの子孫であった事が明らかとなってしまい、カイオウは自らの「悪」というアイデンティティを失ってしまい、ケンシロウに敗れてしまいます。
憎しみだけで生きてきたカイオウにとって、戦士である自分を容認され、さらにあれほど嫌悪していた北斗宗家の血が流れている人間であったことを知らされた時点で、既に勝ち目はなかったと言えます。
まとめ
北斗の拳に登場するキャラクターの中で、カイオウは言ってみれば「悪に一途」な男でした。
正義のため、愛のためなどの理由ではなく、自らの行為が悪と知っていても、何の躊躇もなく行動をやめない男、それがカイオウでした。
でも、単なる悪人と言うのではなく、力あるものがトップに立つという修羅の国を短期間で建国するなど、政治的手腕を発揮することのできる「知恵のある悪人」でもあったわけです。
カイオウが結局ケンシロウに敗れてしまうその理由、それは「成長する機会」を自ら放棄してしまったことではないでしょうか。
修羅の国は、結局一番強い者にだれも逆らえない仕組みの国になりますから、当然カイオウがトップであり、周りの人間にカイオウに逆らう人間は誰もいないわけです。
その点ケンシロウは、ラオウやファルコなど、一度は敗れてしまうようなこともありましたが、その後復活して再戦すれば必ず勝利するという、成長著しい戦士です。
この「成長」のあるなしが、最終的にカイオウの敗北を決定づけたのです。
カイオウ自身も戦いの最後では自分自身の境遇を悟り、最後にはケンシロウにかなわないと畏怖すらします。
カイオウはケンシロウにとどめを刺されるのをよしとせず、結局溶岩うごめく火口に身を投げて絶命しますが、カイオウなりの最後のプライドの見せ方だったのでしょう。
カイオウはただの悪人ではなく、アイデンティティの確立の方法が「悪人」しかない境遇になってしまった、プライドの高い戦士であったのです。
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